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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第4章 岬?
あれ……?
急なめまいを覚えて、思わず尻もちをつきそうになる。なんとか堪えた時に、アスファルトを足で踏み鳴らしていた。
その音により、無様なわたしの存在が気づかれてしまう。おそらく抱き合いキスをする寸前だったはずの二人が、同時に視線を向けていた。
「あ……!」
「――!?」
「ま、待って!」
呼び止められたけど、その言葉に従うわけにはいかないと思った。わたしはめまいを覚えた頭をふるふると振り、慌てて一目散に駆け出していた。
「うわあああっ!」
悲鳴とも嘆きとも判別できない音を吐き出しながらも、とにかく逃げなければいけないと強く感じた。
綺麗な二人の前で、わたしだけが醜いと思う。だから、逃げなければならない。二人の前から、いなくならなければならない。
理屈とは違うけど、まずはショックというよりも、恥ずかしさの方が勝っていた。
通りから路地を曲がり、いつもの帰り道を辿らずに、もう一つの路地を逆に折れ、ジュースの自販機の影に姿を隠す。
はあっ、はあっ、はあっ――。
過呼吸気味に息を吐き出すわたしに、それ以上の逃走は不可能だった。そんなわたしの後を彼が追ってきたかどうかは、わからない。暫くはそこに身をひそめ、耳に入る音は乱れた己の呼吸音だけ。
それが静まるまでは、他のことを考えることも、別の感情を受け止めることも、できそうになかったから。