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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第5章 均
「……」
この辺りではひと際立派な十数階建ての賃貸マンション。家賃はどれくらいなのだろう、と考えながら呆然と見上げた。
「……」
美里さんが建物入口でキーをかざして、オートロックの扉の向こうのエントランスへ。広々としたホールの床に張り詰められた石材が、間接照明を柔らかに反射する。
メールコーナーに立ち寄った後、美里さんに促される形でエレベーターホールへ。
「……」
一階から十の階層を駆け上がる密室の中で、僕はまだ無言のまま美里さんの背中を見つめていた。
「……」
美里さんの方も、僕をマンションに誘うまでとは違って、急に無口になってしまっている。果たしてこのまま部屋に行っていいのだろうかと、また不安になった。
だけど、やっぱり肝心なのは自分の気持ちだ。自分がどうしたいのか、どうした方がいいのか。ちゃんと考えた上で決めないから、岬ちゃんの時だって、結局は後悔することになった。
「……」
不意に岬ちゃんのことを思い浮かべれば、複雑な心境が胸の中を満たしはじめた。