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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第1章 山本均
「ふあぁ……」
あくびがでるのは、退屈な人生のせいじゃないだろうか。と、ふと思った。
時間は多くの人々が夢をみているころ。すなわち深夜。バイト先のコンビニでは商品搬入後の作業が一段落したのを機に、こんな風にあくびを連発したくなる時間帯が訪れていた。
客足もすっかり途絶え、同じシフトの先輩に至っては僕にレジを任せバックルームでサボっている始末である。
本来ならば仮にも仕事場で、暇を持て余すなんてことが許されるはずもない。お客が少ない深夜帯であるからこそ、できることだってあるのだから。
半年前のこと。駅前に大手コンビニチェーンが開店し、当店のお客はごっそりとそちらへ持っていかれてしまった。当初は危機感を顕わにしていた店長も、最近はあきらめムードさえ漂わせはじめている。
僕らが弛緩するのも、そんな事情によるところが大きい。深夜組が多少怠けたところで、大勢にはあまり影響はないようだった。
「店が潰れたら、どうするんだろう?」
まるで他人事のように呟いている。
今から約一年前、高校三年生だった僕は大学受験に惨敗。浪人は許さないという両親の方針は事前に伝えられていたけど、それでも逃げ道はあるだろうと高を括っていた。真摯にお願いすれば、一年くらい大目に見てくれるのではないか。
でも、そんな僕の考えはアメリカ産のカップケーキより甘かったわけで、当時の両親との会話を反芻すれば我ながら恥ずかしく思うしかない。