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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第6章 美里晶
彼との、はじめての情事が過ぎて――。
「……」
私は呆然と、見慣れた天井を見つめる。見慣れてはいたけれど、いつもとは違って見えた。
「美里さん……?」
隣の、彼に聞かれて。
「ううん。なんでも」
と、手慣れた笑みを返すけど、その表情ほど心にゆとりはないのだ。
激しく求め合った最中に「晶と呼んで」と、安いドラマのラブシーンのようにベタなお願いをしていた。
行為の最中は聞き入れたくせして、今はまた「美里さん」に戻っているけど、彼には特別な意識はないようだ。
それに対して、軽くクレームをつけようとしたけど、流石にキャラじゃないだろうと止めた。それなら、私のキャラとはどんな風だろうかと考え、自分が彼の前で飾っていたことを自覚する。
彼――山本均くんの前で、どんな態度を取れば正解なのか、それは探り探りになりそう。
なぜなら、私――美里晶にとって、今夜ははじめての夜だから。けれど、それは、裸体を絡め愛し合った経験がない、というのと同義ではない。
「ねえ」
「はい?」
「私って……どうだった?」
山本くんの方に寝返りを打ちながら、頬に手を当てて聞いた。
「え?」
「エッチした、感想は?」
曖昧な問いにあからさまなディテールを付け加えた。それに対し彼が困ったのも無理はなくって、我ながら、なんて質問をしているのだと半ば呆れている。
だけど彼は、私が見込んだ通り素直で真面目だ。そういうタイプだと直感したからこそ、私はすぐに見初めていたのだから。
「気持ちよかった、という意味なら……最高です」
そらした視線をシーツに落とし、その頬を染めながらも、彼はそう言ってくれた。
ならば、女冥利に尽きる。