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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章 タモツ
地元の本屋とかに立ち寄って、家に帰ったのは正午過ぎ。シャワーを浴びて自分の部屋に戻るが、朝まで寝ていたから昼間に睡眠を取る気にはなれない。
今夜もバイトだから、少しでも寝ておきたいところだけど。
眠くなるまでと思い、机に向かうと久しぶりにノートパソコンを開く。起動するまでの間、なんの気なしに本棚に並ぶ参考書の背表紙を眺めていた。
今の自分には無縁なのに、いつまで並べておくのだろうと、他人事みたいに考えている。
パソコンが立ち上がると、ネットに接続。簡単な調べものならベッドに寝転がってスマホを弄ればいいのだけど、なんとなく机に向かってパソコンを使いたい気分だ。
最初に【声優】【養成所】とのワードで検索する。近頃は声優志望の若者がとても多いと聞くけど、ヒットした記事や専門学校・養成所のサイトの多さがそれを物語っていた。
端からクリックして眺めていくうちに、気分がどんどんと重くなってくる。その原因のひとつ目は、当然ながら何事にもお金がかかるということであり。ふたつ目は、自分が心の底から声優を目指してはいないことを、見透かされたような気がしたから。
結局は親に言われるままに就職をするのが嫌で、口からでまかせを言ったとされても仕方がないだろう。
アニメが好きだからとか、学園祭で演じて心が躍っただとか、そんな想いだけでは漠然としていて、すべてにおいて中途半端だ。本当にやりたいのなら、たとえ小さなことからでも、がむしゃらにやっているはず。
なにもせずに悩んで立ち止まってる時点で、僕にはそんな資格がないように感じた。
「資格……?」
ふと頭の中で出てきた、その言葉を反芻する。