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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章 タモツ
もう、その名を口にしてはいけないと思っていた。そもそも僕が目にしていた〝彼女〟は、〝岬〟という名ではなかったのである。
なりより事実を明かされた今、〝彼女〟自身がその名で呼ばれることに心を痛めるような気がした。内にある傷跡を癒すことができずに、〝彼女〟は苦しみ続ける。
僕では、なにもしてあげることはできなかった。一度は確かに「僕が必要だ」と、そう思い込んでみたけど……。
美里さんと、つき合うことに引け目を感じる一方で、〝彼女〟に対してそのような感情を抱いたのは〝彼女〟のことを自然と下に見ていたからではないのか。
僕から手を差しのべ施してあげることに、気分をよくしていたとしたら、そんな自分を最低だと思う。
だからこそ、もう〝彼女〟のことは……。
「こんな風に、うじうじしてたら……美里さんにだって悪いよ」
長椅子に一人座り、またしてもネガティブな呟きを口にしている。そんな自分が、とことん嫌いだ。
結局、僕は同じところを、ぐるぐる回っている。