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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第8章 あやか
「それで、あきらめるのもなんだから、一度電話してみたわけ。親に反対されたんだけど、どうしたらいいでしょうかってね」
「反対もなにも、まだ話してないじゃん……」
「いいから! でさ、そしたら向こうが――今は無理でも、将来的に状況が変わるかもしれないので、どんな仕事なのか話だけでも聞きに事務所においでって、言ってくれたの。もし一人で不安なら、友達を連れてきてもいいからって」
「おお、なんか熱心じゃん」
「そう感じた。だからさ、話だけでも聞いておこうと思うんだけど――ね、お願い。一緒についてきてくんない?」
「ええっ! ちょっと、彩佳。話、聞いてた?」
そうして、はじめて話を振られた。わたしは机にスマホを置くと、仕方ないなあ、といった感じで話に加わった。
「一応はね。だけどモデルなんて、ちょっとスタイルいいってレベルじゃ務まらないんじゃないかな」
スカウトされた子も含め、わたしたちの身長は全員160センチ未満。現実的に考えれば、よくて〝自称・読者モデル〟という辺りがせいぜいだと思った。
「それがね。今はモデルさんも、タイプに応じて様々な需要があるんだって。小さな事務所だから大手と真面に張り合っても勝ち目はないし、等身大で親しみを感じるようなタイプをコンセプトにしてるらしいよ」
「ふーん」
「もちろん、本気でやる気なんて今のことないけど。なんか面白そうだと思わない? ねえ、あやかー」
やけに熱心に語る、友達の話を聞き終え。
「まあ、ついてくだけなら」
それでも断らなかったのは、わたしの中に興味が芽生えていたからなのだろう。