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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第8章  あやか 


 それから暫くは、なにもする気が起こらなかった。

 夏休み中ということもあり、部屋から出ずに一日中ごろごろしたりしていた。父や母は自分たちのことで精一杯らしく、わたしのことを特に気にする様子はなかった。

 あの夜のことを、繰り返し夢にみるようになった。あまりに同じ夢をみたので、それが現実かどうか、わからなくなる。

 いっそ、そのまま区別がつかなくなればいいのに。その方が楽になれるだろう。

「昨夜のことは、あくまで合意の上のことだから」

 ホテルの部屋を出る時、わたしの背中に浜谷陸也が放った言葉だ。

 思い返して怒りを灯すのは簡単だけど、燃え尽きてなくなるのは自分のような予感があり、それが怖かった。うじうじ考えていると泣けてきて、その後で酷い疲れだけが身体に刻まれた。

 暫くは、そんな日々だった。

 その間、小さな仕事はすべてキャンセルしている。でも、月末には写真集の撮影があり、それをキャンセルすることは許されないだろう。

 案の定、その少し前に事務所に呼び出された。でも、わたしを前にして加賀見さんが告げたのは、写真集の件ではなかった。

「ったく、大変なことになったな」

 わたしの前に放り出されたのは、ある記事のコピーみたいだった。

「!」

 まず目に飛び込んだのは、ホテルのエレベーターホールで、浜谷陸也に肩を抱かれているわたしの写真だ。


『FP7浜谷陸也、未成年新人モデルとの親密なカンケイ? 地方ロケで訪れた避暑地での秘密の一夜』


 写真に合わせ記事の見出しを目にすると、わたしはめまいに襲われるのだった。

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