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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第8章 あやか
「……」
「さあ、さっそくで悪いが、すぐにでもやってもらうぞ。今日は、顧客を挑発するための動画を撮らせてもらう。なにせ、あのスキャンダルが風化する前の今こそが、稼ぎ時だからな」
「……」
「お前の両親は金を必要としている。事業が頓挫すれば、多大な借金を背負い込むことになるんだ。遅かれ早かれ、稼ぐしかない。だったら、後で苦労するよりも早い方がいいだろ?」
「……」
「さあ、さっさと水着に替えろ」
そう言って伸ばしてきた手を、わたしは切りつけた。
鮮血が飛ぶ。たけど、かすり傷だ。
「あやか、どういうつもりだ?」
「あなたは……許せない!」
わたしはナイフを手にしながら、言葉を絞り出した。
「ハハハハハ!」
「!?」
高らかに笑った加賀見に、ぎょっとする。
向き直ったその目は、ぎらりと鋭かった。
「そうかそうか。いいねー。そういうつもりなら、こっちも――考えがあるぞっ!」
机にあるものを投げつけられ、それを肘で受けた。その瞬間、踏み込んできた加賀見が、わたしの手からナイフを払った。
反動でソファーの上に倒れ込んだ。そのわたしに、じりっとにじり寄ると加賀見が言った。
「じゃあ、実際に……男の喜ばせ方をレッスンしよう」
「……」
わたしは後ろ手に、スマホを探った……。
【第八章・終わり】