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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章 僕
「――その後のことが、あの動画に撮られた場面です」
岬ちゃんは、淡々とした表情のまま、それを語り終えている。僕にとって話の内容は、そのすべてが衝撃だった。
以前に見せられた動画も、既に聞かされていた、岬と名乗るきっかけとなった待合室でのエピソードも、岬ちゃんが今に至るまでの、ほんの表層にすぎないのだと判断するしかない。
彼女の気持ちに寄り添おうとすればするほど、僕の貧弱な想像力が――彼女の深い悲しみや怒りや苦しみや、味わった怖さ痛みや悔しさや、そのすべてを体現することをあきらめたような現在の心境も――そこから乖離してしまうような、無力感に苛まれた。
岬ちゃんを支えたい、なんて。そんな風に思っていた自分が、いかにも軽々しく思え、吐き気がするほどの嫌悪が襲った。
言葉も出せない僕をよそに、彼女は話を続けた。
「結果的には、あの動画を残すことができたおかげで、わたしはこの部屋で引きこもることが――できました」
動画のおかげで、できた……?
「わたしは身も心も傷つき、ぼろぼろになりました。そんな失意の中で、妊娠したことに気づいたんです」
「!」
「もう一人で抱え込むことができない。そう感じたわたしは、なりふり構わずに両親に協力を仰ぐしかありませんでした。そのためには、浜谷とのこと、加賀見とのこと、すべてを隠すことなく打ち明ける必要がありました」