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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章 僕
彼女の「なりふり構わず」という言葉に、両親との関係性が表れているようだ。少なくとも世間一般のそれとは、既にかけ離れていたのだろう。ここまで話を聞いた僕には、それも仕方のないことだと思うしかなかった。
それは、岬ちゃんの次の言葉にも如実に。
「最初は信じられないといった様子の両親も、例の動画を目の当たりすると態度を大きく変えることになりました。わたしを伴い事務所に乗り込むと、警察に被害届を出すと言って、直接加賀見に迫ったんです。ですが――」
「……?」
「加賀見に金銭での解決を提案されると、両親はあっさりと示談を受け入れる方向に転んだようでした。当時は立ち上げた事業が上手くいかず、慢性的に資金不足だったようです。むしろ渡りに船だったのかもしれませんね……」
「ま、まさか!」
思わず、声を出さずにいられなかった。
「加賀見からの話を一旦持ち帰った後、最終的にはわたしの意思次第だとは言いながらも、両親は性犯罪に立ち向かうことの困難を切々と語っていました。暗に泣き寝入りしろと、そう言いたかったのです。証拠の残る加賀見に対してはともかくとしても、巨大なバックボーンを有する浜谷陸也に対してはどうにもならない。それどころか、事を構えればただで済まなくなるのはこちらの方だと……結局は加賀見に、丸めこまれていたんですね」
そして岬ちゃんは感情のこもらない声音で、こう続けたのだ。
「その時、思ったんです。ああ、〝この人たち〟は親ではなく、味方ですらない。最早、この世界にわたしの味方など、一人もいないのだと思いしったのです。そして後になって思えば、お腹の子を堕したことで、わたしは完全に孤立無援となっていたのですね……」
「……ッ!」