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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章   僕  


 加賀見はまた、涼し気な顔を向ける。

「キミは、この動画をどこで?」

「ネットで拾いました。コンビニであなたのタトゥーを見た時に、同じ人物だと確信しました」

 平然と嘘を言えるのも、声を変えているからできること。

「ハハハ、それで俺をゆすりにきたわけか?」

「その通りです」

 加賀見は頭の上で手を組むと「それは、まいったね」と、ソファーに大きく沈み込んだ。そうしてから、目を閉じてなにやら思慮しているよう。惚けた口調で話す。

「だけど、それを俺に買わせようとするなら、お門違いだ。大体ネットで拾えるものなら、そんなことをしても意味がないからね」

「ですが、加賀見永一さん――僕は偶然に、あなたと動画の中の人物を結びつけてしまったんです。だから、あなたを脅すことができます」

「だが、どうだろうねぇ。赤の他人であるキミが、それをしっていてもどうすることもできないだろう。ネットでバズるほど、当方は名のある人間ではない。そしてなにより、実はその動画の中の相手とは話がついている」

「どのように、話をつけたんですか?」

「相手の親に、ある程度の金銭を支払っているよ」

「……」

「なんてね。実はそんなことさえ、キミに話す必要もない」

「どういう意味ですか?」

「この動画を暴行だと受け取るのは、そっちの主観にすぎないだろ? これは〝同意の上のプレー〟だと惚けてしまえば、それで話は足りるからねー」

「あなたにとって、それで済まされることですか?」

「もちろん」

「相手を傷つけたという、想いに苦しんだことはありませんか?」

「ああ、ないね」

 加賀見は口角を釣り上げた口で、そう答えた。

 僕が嘘を交えてまで話した目的は、加賀見の心情をあぶり出したかったから。しかし、なにをどうしようとも加賀見からは微塵の後悔も、罪悪感だって感じることはできない。それどころか、動揺すら表すことはなかった。

 この男を打ちのめすには、一体どうしたらいいのか?

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