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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章   僕  


 岬ちゃん、弘前あやかの名で活動していた元モデル、ドテモン。その元マネージャー兼所属事務所社長の加賀見永一。そして、コンビニのバイトの僕、山本均。

 この奇妙な取り合わせによる会合は、不穏な空気を漂わせながらはじまっていた。

「そちらの変わった身なりの人は、どなた?」

 加賀見は僕の隣に座る人物を、まじまじと眺めている。

「……」

 それがまったくの他人の目であっても、避け続けなければいられなかった。傷を負わせた張本人を前にして、彼女は精神に大変な消耗を受け続けているはず。それでも正気を保っていられるのは〝ドテモン〟であるからだ。

 だけど、このままでは話を進めることができない。

「加賀見さん、今日はあなたを脅しに伺いました」

「俺を脅しに?」

「はい。まずは、こちらを見てください」

 僕はそう言って、自分のスマホをテーブルの上に置いた。そこに再生された動画は、岬ちゃんがSDカードに保存していた例の場面だ。

「……」

 加賀見はその一部始終を、黙ってみつめる。表情は変わってないが、そこはかとない緊張感は漂わせていた。そして、再生が終わると言う。

「これが、なにか?」

「動画の中の男と同じタトゥーが、あなたの手首にもありますね」

 と、一瞬。反対の手で、そのタトゥーを隠すような素振りをしてから、僕と視線が合うと今度はそれをかざし、不敵な笑みを浮かべた。

「だから、なに? こんなの、ありふれたデザインだよ。なにかの証拠になるようなものじゃない」

「じゃあ、音声はどうですか? あなたの声に、よく似ていると思いますが」

「……」

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