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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章   僕  


 ようやく、恋人のキスをした。僕は、岬ちゃんと。

「――好きだ」

「ん――わたしも」

 はじめは静かに、確かめ合うように。やがて、呼応すると徐々に激しさを増した。

 角度を変え、唇を噛みあい、目を合わせ、舌を差し込む。

 また目を閉じて、僕は吐息を吐き、彼女の吐息を耳にすれば、この胸を熱くする。

 両手で肩を掴み、離れないように、離さないように。そうしてまた一段と激しく、衝動を唇に託し、ぶつけた。

 唾液の滴る舌を、何度も何度もぐるぐると絡める。岬ちゃんの歯並びの凹凸を、ひとつひとつ舌先で探った。

 鼻の頭の位置を頻りと入れ替え、もっと奥に届けようとして、それが叶わずに焦れると、また熱い吐息を交わし合った。

 ある瞬間に、どちらからともなく離れ、互いの顔を見つめ合う。

「均くん――大好き」

 潤んだ瞳を向けたまま、岬ちゃんは自ら衣服を脱いだ。

 その眼差しを受け止めたまま、僕も服を脱ぎ捨てる。

「岬ちゃん!」

「抱きしめて――思い切り」

 もう悩みも、迷いも、苦しみも、戸惑いも、恐れも、怒りも一切の雑念を持ち寄ることなく、僕たちは互いの裸の身体を確かめるように抱きしめ合った。

 愛しい、その気持ちを、ただ熱く燃やせばいい、と感じる。この一瞬を綺麗に切り取る必要もなく、相手を求めることに、どん欲になるのもまた自然だ。

 何度もキスをして、身体を密着させ、両手で身体を弄り、もどかしく両脚さえも絡め合わせた。

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