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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章 僕
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『はじめまして。私は、弘前あやかといいます。二年ほど前まで雑誌の水着グラビア等を中心に、芸能活動をしていた者です』
弘前あやかは顔も名前も隠すことなく、カメラ目線で話す。その態度は、淡々としながらも堂々としている。映っている上半身にはグレーのフリースを身に着け、ふたつに結わえたおさげ髪を肩口から垂らしている。
素顔に近いメイクをしていた。
背景は白い壁。彼女が座るテーブルの上には、ノートパソコンが置かれている。
撮影には、外付けのWebカメラを用いていた。
『ですがその後、芸能活動をできなくなります。そのきっかけは、某週刊誌のスクープ記事。相手が有名な方なので、ご記憶の方も多いのではないでしょうか?』
弘前あやかは一旦息をつき、それから言った。
『私、弘前あやかはアイドルグループ【F】の【H】さんに、性的な暴行を受けました』
一応はイニシャルを使ってはいても、前述の記事からそれが誰を指すのかは、周知の事実だ。だけど、弘前あやかの告発を証明するには、言葉だけでは足りない。
『記事から二年近くも経って、このような告発に至ることに、疑問を持たれる方も多いと思います。しかし、心に残った傷跡を癒すことに長い時間を要してしまった結果、わたしの取れる選択肢は決して多くありませんでした。この手段を用いることに、私自身が大きなリスクを負うことになるでしょう。ですが、私は【H】さんから受けた暴行の事実が、闇の中に消されてしまうことを、なによりも恐れるのです』
弘前あやかは感情を抑えた口調でそこまでを語り、パソコンのマウスを手にした。
『今からお聞かせするのは、私、弘前あやかと【H】さんの会話。今から数週間前の四月十七日、時刻は午後十時すぎ。場所は都内某所のマンション一室。こちらからアポイントメントを取り、記事の一件以来の再会となった、その時の【H】さんとの会話音声になります』
説明の後、音声の再生がはじまる。弘前あやかは、視線を下げた。
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