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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第9章   僕  


 会話は挨拶等の導入部分を省き、肝心な部分を抜粋している。しかし、その間については連続的なものであって、意図的な編集は行っていない。

 ただ、【H】の名前が入る部分は、電子音をかぶせてある。

『週刊誌にスクープされた? ああ、そんなことあったなあ……』

 男の声が言った。

『ご記憶に、なかったんですか?』

 女の声が聞く。

『いやいや、あやかちゃんのことは、もちろん印象に残ってるよ。でも、週刊誌に書かれた相手が誰だったかってなると、ちょっと記憶が曖昧なんだよねー。そういう問題になると、事務所に任せっきりだからさ』

『そう、ですか……』

 心なしか、女の声にショックの色が滲んだように聴こえる。

『こちらは大変でした。記事が出たことで、仕事は全部キャンセルになったみたいで……』

『ええっ、そうだったの? 全っ然、しらなかった。そう聞くと、なんか悪いよねー』

『いえ……』

『それで、今はどうしてるの? 仕事は?』

『なにもしていません。部屋で引きこもっていますので』

『それは、よくないって! 病気になっちゃうぞ』

 男が言う。その言葉には一切、悪びれた様子は感じられない。

『それで? そんなキミが、どうして僕に会おうと思ったのかな?』

『それは――』

 女は少し間を開けてから、話しはじめる。

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