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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第2章 〝岬〟
きっと、彼には彼の事情があるということなのだろう。それに対して、不満を抱くことはない。不安になることはあったとしても、わたしは彼の行為に殉じると決めていた。
優しい彼と意地悪な彼、わたしはその両方を受け入れようと思う。そして、そんな彼を前よりも愛おしく、今から思おう。
仮に彼の本性が真っ黒だったとしても、彼になら滅茶苦茶にされてもかまわない。そうするだけの権利が、彼にはあるから。わたし自身が、そう決めていた。
「わたしこそ……こんなにもエッチで、ごめんなさい」
「岬……ちゃん?」
均くんは、その名を口にすると、わたしの顔をとても不思議そうに眺めていた。
そう。わたしは〝岬〟。
名を聞かれた時に、自然と答えていた名。
だからこれから、彼の前では、わたしは〝岬〟だ。
そんなわたしにとって、均くんは唯一無二の存在である。
なぜなら、わたしはあの夜に既に一度、全てをあきらめる寸前だったのだから。
それは今より、数か月前のこと。