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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第2章 〝岬〟
自分の愚かさを包み隠すほどに、世間の目が冷たくなってゆくのが、よくわかった。それでも、わたしには調度いい距離感。他人との間には〝壁〟が必要不可欠だった。
もう、男女の区別すらなく、己とそれ以外を徹底して隔てたかった。
生きることは厄介だから、数日に一度、空腹に耐えかねてコンビニに赴くことになる。その時に、身を覆う〝武装〟がナシではいられなかった。
全ては、過去への戒めであるのかもしれない。
だけど日に日に、それすらも苦痛と感じるようになった。深夜の闇に乗じて夜道を進んでも他人とすれ違うことが度々あるが、その都度わたしは恐々とする。
そうして、ようやくたどり着くコンビニは一転、煌々として目がくらむほど明るいのだった。その光景はまるで、闇の住人を拒絶しているかのよう……。
暗闇では怯え、明かりの中では訝しがった。わたしに対する、他人(ひと)の態度だ。けれど、わたしがそれ以上に慄き、極限まで自らを卑下することを、誰もわかろうとはしない。
今更、否定した過去の自分には戻らない、戻れないから。立ち返るくらいなら、いっそ――そういう覚悟は、常にあった。
この時代、外に出なくても物を得る便利な方法はいくらでもあるのだろう。食料だって、部屋まで届けてもらうことはできるのだ。
だけど、他人が部屋に来るのは、わたしの最も耐えがたいことのひとつ。たまにインターホンが鳴った時は、緊張で身体が強張り一歩も動けなくなる。
だから、深夜のコンビニにすら行けなくなったとしたら、それはもう終わりなのではないか。そう考え、いつしかそこが、わたしの最終ラインとなった。
そして、問題の夜は訪れることに。