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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第1章 山本均
「いらっしゃいませ――!」
慌ててそう口にして店の入り口の方に目をやった時に、猫背を丸め、ぬうっと入店してきたその姿を見て思わず怯んでしまった。その人物は三日に一度くらいの割合で、必ず深夜帯に訪れるお客だった。
ダボダボの紺のジャージの上に、花柄の〝どてら〟を羽織っている。後ろでひとつに束ねた髪を、つばが波打つ、くすんだ色のチューリップハットですっぽりと覆い隠していた。
口元には大きなマスク、目元には黒縁の眼鏡を着用しているから、素顔を窺うことはほとんど無理である。
華奢にはみえるけど、女性と断定するほどの根拠はない。
「……」
レジにいる僕から視線を外して、こそこそと雑誌コーナーへ向かう。だけど雑誌には手を触れることなく一通り表紙だけを眺め、そのままドリンクコーナーへ。
暫く足を止め、2リットルの水を一本そっと取り出す。その後も、レトルトのご飯、カップラーメン、スナック菓子等を順に手に取っていった。
「オイオイ、またドテモンかよ」
裏でサボっていた先輩が、いつの間にか横にきて肘をつついた。