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プロポーズ体験売り出します
第2章 二人だけのオフィス
「今日は初日だから特別サービスでコーヒー淹れてあげたわよ。
 これからはキッチンにコーヒーメーカー置いてあるから、
 まず朝に入れて、そのあともなくなったらその都度淹れておいてちょうだい。
 いいわね?」

「はい、わかりました」

まり恵ちゃんが差し出したマグカップを受け取る。
陶器のマグカップの素朴さが気に入った。
両手で包み込むと、信楽の作家の物だとまり恵ちゃんは自慢げに口角をあげていた。

それにしても・・・
こんなにセンスがいいのなら企画だとかセレクトだとか、いわゆる
クリエイティブな仕事もできそうな人だけど、なんで総務なんだろう?
よし、今日は初日だから何でもありかなと勝手に決めつけて、
質問攻めにしてやろうと口を開いた。

「中野さん企画とかの仕事に興味なかったんですか?センスいいのに、
 もったいないなと思いますよ。それと、どうしてこの会社に入ったんですか?
 事業内容に興味が、なんてありふれた理由ですか?でも総務なんですよね、
 どうしてこの会社選んだんですか?」

一気に攻め込んでやれとばかりに質問を連打する。
するとまり恵ちゃんはふっと鼻で笑ってからこう答えた。
この会社に入りたかった、ただそれだけ、と。


「えー?じゃあやってる事がプロポーズのサプライズ演出じゃなかったら
 違うとこに行ってたんですか?」

聞かれたまり恵ちゃんは、窓から本社ビルを見上げたまま呟いた。

「なにやっててもいいのよ・・・」

その横顔、その言葉。何か意味か目的がある。
それって、梶原社長?と俺は読んだ。


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