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蝶々と甘い蜜。
第7章 歯車が狂うとき
甲斐さんが三島の隣にいる女性にそう呼んでいるのがはっきりと聞こえた。はっきりと聞こえたのに…聞こえていないことにしたかった。


「嘘だ……」


さっきまで私のこと愛おしそうに見つめてくれた瞳はもう、隣に立っている奥様と呼ばれる人を見つめている。すごく、嬉しそうに…。


「嘘……っ……」


私は最初から三島に愛されていないのはわかっていたけど、こんな姿を見せられたら…奥様が帰ってきたら…もう、私には望みは何もない。


「宮園さん……」


そのまま下に座り込んで、身体は動けなくて、夏なのに肌寒い風が吹いていた。いつか、こんな日が来る。そんなことわかっていたはずなのに、現実をつきつけられると、ショックは思った以上に大きかったようだ。私から、三島を突き放したというのに。


「もう、行こう。」


福田さんが手首をさっきとは違って優しく引っ張ろうとしてくれた。こんなところにいてもしょうがないから、起き上がろうとしたが、よくよく考えてみると、どうしてこの人はここに私を連れてきたのだろうか。


「福田さん……どうして私をここに連れてきたの?」


「それは……」


三島が、奥様と一緒にいることをどうして知っていたの?
どうして……私をここに連れてきたの……?
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