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不器用な夫
第12章 勃起



公平は黙って家を出る。

ハコは…。

リビングのソファーに居る僕の傍にやって来る。


「行かないのか?」


そう聞いた僕の頬にハコがキスをする。


「行って来ます。」


ハコが笑顔を翻し、家から出て行った。

新婚という事を考えさせられた。

明日からは学校で僕とハコが夫婦として居られる時間は今日だけだ。

来週は三連休にはなるが完全な試験前で僕はハコに外出など認める事が出来なくなる。

たかがスーパー…。

一緒に行ってやるべきだったか?

落ち着きを失くし、家の中をウロウロする。

何度もトイレに行き、時計を睨みつける。

もう1時間。

公平のやつ…、何をやってんだ?

たかが買い物のくせに…。

公平とハコを2人だけにした事を後悔する。

公平は執事だ。

しかも僕の身体に溺れてる執事だ。

だからハコとおかしな事にはならないだろうとはわかってる。

でもハコの方はどうなんだ?

買い物にすら付き合わない冷たい夫だと感じたかもしれない。

ハコを大切にすると決めたのに、ハコに比べて僕はハコに何もしてやれていない。

ハコの嫌いな勉強を押し付けるだけの夫…。

ハコには嫌なだけの夫かもしれないと思うだけで自分が情けなくなって来る。

1人には慣れてるはずなのに…。

ハコが居ない事に耐えられない。

僕のハコ…。

僕の妻…。

そして我が家の玄関が開く。


「お車をお出しすればよろしかったですね。」


そんな公平の声がする。


「ごめんなさい、買いすぎちゃった。」


ハコの嬉しそうな声までする。

僕のハコ…。

ハコと公平は山の様なスーパーの袋を抱えてる。

2人が新婚夫婦に見えた。

不器用な僕は悔しさと自己嫌悪を感じるだけになるハコとの休日の始まりだった。


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