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不器用な夫
第12章 勃起
「試験勉強はして欲しいけど…、その前に昼と夜の食事をどうするか決めておきたい。」
この先の生活で行き当たりばったりには出来ない部分をハコと話し合う。
「要さんの食事はハコが作りたい。」
可愛らしい口元をキュッと引き締めてハコが真っ直ぐに僕を見る。
学生がこういう顔をする時は本気だとわかる。
「わかった。公平と相談しなさい。」
ハコだけに任せるのは、やはり不安が多い。
嫌だとは思うが公平をハコに付ける必要がある。
公平を呼び出し要件だけを言う。
「御意…。」
公平はそう返事をするだけだ。
「まずはスーパーにお買い物に行きましょう。」
ハコがご機嫌になる。
「いってらっしゃい…。」
僕は逃げる。
「要さん…、行かないの?」
ハコが悲しげな表情をする。
公平はニヤニヤとして僕を見る。
近所にある大型スーパー…。
1度だけは行った。
コーヒー豆を買いに…。
そこで僕は地獄を見た。
通路がやたらとたくさんあり、コーヒー豆がどこにあるのかがさっぱりわからない。
ウロウロするだけの僕はカートを押しながら凄い勢いで買い物をするおばさん達にぶつかり続け、やっとコーヒー豆を見つけた時には自分がいつも飲むコーヒーの銘柄が全くわからずに買い物にすら至らなかったという思い出のスーパー…。
あの時の公平はインフルエンザ…。
結局、本家である東に来て貰う羽目になった。
思い出しただけでも鳥肌が立つ。
僕はあの日からスーパー恐怖症です。
「いってらっしゃい…。」
もう1度僕はそう繰り返す。
僕は行かないという意思表示。
苦手な事からは逃げる悪い癖がある。