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不器用な夫
第13章 食事



「ハコ…、終わったよ。」


タオルで濡れた手を拭きながらハコが居るリビングの方へと振り返る。


「ハコ?」


リビングを見に行く。

ハコの姿が見当たらない。

リビングを出て行った覚えははい。

リビングの向こうはテラスだけで、寝室や玄関に行くなら台所の横をすり抜ける事になる。

ハコは何処だ?

ソファーを覗いて見る。

小さな少女が身体をより小さくして眠ってる。


「ハコ…。」


その少女の髪を撫でるだけで幸せな気持ちになる。

今日1日、ハコは頑張ったのだ。

嫌いな勉強をして、買い物に行き食事を作る。

お嬢様で何でも執事任せだった彼女が執事嫌いの僕の為に一生懸命に頑張った。

それだけ満足だ。

ハコの愛を充分に感じる。

ハコとなら、乗り越えられると確信する。

不器用な僕は眠るハコを抱き上げる。

軽い少女…。

それでも不器用な僕はヨロヨロとしながら寝室に運ぶ事になる。

1歩…。

また1歩とハコを起こさないようにしながらゆっくりと寝室に向かう。

寝室の扉を開けるのも一苦労だ。

ハコはただ僕の腕の中で安心した顔で眠る。

焦る必要はない。

ハコはまだ16になったばかりの少女…。

清太郎さんは僕が30を過ぎれば性欲が高まると言っていた。

それは男に対するものか?

愛する女性に対するものか?

不安な気持ちで身震いをする。


「ハコだけだよ…。」


眠るハコの小さな唇にキスをする。

ピンク色でぷっくりと膨らむ艶やかな下唇。

それを少しだけ貪れば


「ん…。」


とハコが寝返りを打つ。


「おやすみ…。」


ハコを抱き締めて眠る。

僅かな夫婦生活の始まりなのに、僕はもうハコの居ない生活は考えられなくなっていた。


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