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不器用な夫
第14章 捻挫
教員室から荷物を取り、戸締まりをして正門に向かえば僕を待つ公平の姿が見えて来る。
「おかえりなさいませ。」
滅多に学校の前まで来る事はない。
ただ、この時間まで僕が迎えに来いと連絡をしなかったから直接学校まで迎えに来たのだ。
「遅くなったな。」
「奥方様が心配をなさってます。」
「そうか…。」
果歩に比べればハコは幸せだ。
それに僕はハコを愛してる。
だからハコの心配をそれほど気には留める必要がないと思ってた。
公平と別れ、家に入る。
「ぐっ…!?」
僕の喉がなる。
Tシャツにミニスカートの小さな少女が自分の膝を抱えるようにして体育座りで玄関に座り込んでるとか思いもしなかった。
「ハコ…?」
「おかえりなさい…。」
拗ねた声がする。
ハコをすぐにでも抱き締めてやりたいが果歩を触った手でハコを慰めるのは抵抗がある。
「遅くなって…。」
ごめんなさいの謝罪の言葉すらハコが遮る。
「ご飯…、食べますか?」
「うん…、その前にお風呂に入っていいかな?」
もう夜の9時を過ぎている。
ハコは1人きりでずっと僕の帰りを玄関で待ってた。
そんなハコに罪悪感ばかりを感じる。
「どうぞ…。ゆっくりとお風呂に入って下さい。」
冷たい声でそう言ったハコがゆっくりと立ち上がり僕に背中を向ける。
「ハコも一緒に入らないか?」
「ハコはもう済ませましたから…。」
僕を見ようとしないハコに胸が痛くなる。
ひとまずは風呂に入る。
ハコの心配がそれほどだと考えてなかった自分に自己嫌悪だけを感じる。
どうしよう?
ハコはちゃんと機嫌を治してくれるだろうか?
不器用な夫は妻の機嫌をとることが出来るのか?
ひたすら湯船でハコの機嫌を治す方法を考えて逆上せるだけの僕だった。