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不器用な夫
第1章 初夜
「今日から、このお嬢さんがお前の嫁だ。」
普通の人なら、その言葉にかなりの抵抗を示すはずだけど僕の場合はそうなるのだろうという状況を予測済みだった為に抵抗は少ない。
ただし…。
僕の嫁にと父に連れて来られた少女を見て驚きが隠せないのも事実だ。
「父さん!?」
「何か不服か?」
顔色1つ変えない父親に文句を言うだけ無駄だとは理解をしてる。
「不服とかいう問題じゃありません。」
もう1度、彼女の顔を見てから彼女を連れて来た父を説得しようと試みる。
「今日からよろしくお願いします。国松先生。」
今の空気を全く読めない少女がニコニコとした笑顔を絶やさずに僕に向かって頭を下げる。
「可愛らしいお嬢さんで良かったな。」
父はそれだけを言うと僕の自宅から出て行く。
「父さん!?」
呼び止めた声は虚しく空振りを喰らい僕は僕の嫁だという彼女と2人きりになっていた。
僕の嫁…。
国松家に生まれた以上はいずれはそうなるという運命は受け入れる。
父さんだって爺さんだって、国松家歴代の男は皆がそうして来たと物心ついた時から言われて来れば、そういうものなのだろうと諦めに似た感覚しか持たなくなるのが人というものだ。
何一つ、不自由をしない暮らしが生まれた時から保証されているような家系では結婚ってやつだけは自由を許されない。
唯一の慰めは僕だけが選べないのではなく僕の相手になる方も僕を拒否する自由がない家柄の女性が選ばれるという部分くらいである。
要するに普通と違うのは大恋愛になるかどうかはともかく、お互いが振られて失恋して傷つく事だけは避けられる運命なのだ。
その運命の相手を見て僕はため息を吐く。