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不器用な夫
第2章 執事
残念ながら、うちの公平は僕の為に車のドアを開けて待つような丁寧な事はしてくれない。
そもそも、それを拒否したのは僕の方からだ。
「なあ、公平…。」
「はい、坊っちゃま。」
「まずは、その坊っちゃまをやめろ。」
「旦那様と呼ぶにはまだお早いと思いますが?」
事実を言われると何も言えなくなる。
現、国松家当主はあくまでも父だ。
父に代わり国松家当主に僕がなるには幾つかの条件が必要である。
まずは嫡子を作る。
その子が6歳になれば僕が当主として跡を継ぐ。
過去の歴史で嫡子問題が色々とあった国松家のしきたりだから僕がまともに当主になるまでは公平は僕を坊っちゃまと呼び続ける。
そのはじめの1歩である結婚ですら、既に躓いてるのではないかと不安になる。
「公平は知ってたのか?」
僕には厳しく意地悪しか言わない男だが、一番信頼が出来るのは公平であり、自分の不安はいつも公平に相談する。
「ご結婚をですか?」
「そうだよ。」
「旦那様からご連絡は頂きました。」
この野郎…。
公平は毎日僕の学校通勤の送り迎えをしてる。
つまり夕べの事を公平は知ってて僕に言わなかったのだと意地悪な公平を睨み付ける。
「なんで言わないんだよ。」
見苦しい駄々を捏ねる。
だから公平は僕の子供扱いをやめようとはしない。
「先に言えば坊っちゃまが逃げ出すかもしれないと旦那様より申し付けられましたから…。」
公平が苦笑いをして僕を見る。
僕が臆病者だから…。
父と公平はこの結婚を強行する事に決めたらしい。
「けど、なんでよりによって茅野君なんだ?」
せめて、うちの学生じゃなければ、もう少し抵抗なくこの結婚を受け入れたかもしれないのにと囁かな抵抗を公平にぶつける。