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不器用な夫
第2章 執事
僕の質問に対して公平が困った顔をする。
「そこは自分にもわかりかねます。ただ今回の縁談を茅野家に申し込んだのはあくまでも国松家からだとだけは聞いておりますが…。」
公平にしては珍しく歯に物が詰まったような言い方で僕にあやふやな説明をする。
「国松家から?」
「はい、旦那様が是非にとという事だったと自分は父から聞いただけです。」
なるほど…。
父の執事である東からの言葉だから公平は断言する事を避けてると感じる。
主の噂話を幾ら従者が事実だとして話したところで主がそんな話はないと否定すれば、それは黒い物でも白とするのが執事の役目だ。
「それは…、いつ頃の話だ?」
ハコの口ぶりでは随分と前から国松家に嫁ぐつもりだった言い方だった。
「3年ほど前だったと…。」
「うっ…!?」
さすがに心臓が止まるんじゃないかと思う。
3年も前!?
それは僅か13歳の少女に25にもなる息子の嫁にならないかと父が申し込んだという状況になる。
「何考えてんだよ…、父さんは…。」
我が父ながら非常識極まりないと僕はため息を吐く。
「坊っちゃまがあまりにも女性に対して消極的であると旦那様なりに悩まれた結果では?」
「僕のせいにするな。」
「御意。」
フッと公平が笑う。
いい男だと思う。
野生的で少し厳つい顔の公平だが女性にはやたらとモテる男だ。
僕に言い寄る女性の中でも公平を意識する女性がかなり多かった。
そんな些細な事も僕が女性に消極的になった原因の1つでもある。
僕の好みの話をしながら、ついでだけどと言い訳をして執事の好みを聞いて来る女性とは付き合う気になんかなれやしない。