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不器用な夫
第17章 罪悪
観音開きの巨大な扉が開き、執事長である東の姿を見ただけで緊張する。
ハコは?
東にそう聞いてやる勇気すら僕にはない。
俯いたまま家に入れば
「要さんっ!」
と元気な声がする。
ゆっくりと顔を上げる。
真っ白なワンピースを広げて僕に向かって駆けて来る少女に胸の奥が痛くなる。
両手を広げてやれば、僕の腕の中にすっぽりとその小さな少女が収まる。
「ハコ…。」
僅か1晩離れただけなのに、何年も会えなかった恋人のようにハコを強く抱き締める。
僕には無理だ。
このままハコを傷付ける事もハコを手放す事も、とてもじゃないが僕には出来ない。
「要さん…、もう体調はいいの?もう大丈夫なの?」
心配ばかりするハコが僕の腕の中で踠きながら僕の顔を覗き込む。
澄んだ大きな瞳は僕の背徳を疑う事すらせずに真っ直ぐに僕だけを映し出す。
白い頬を紅潮させて興奮気味に僕の顔を細い指先で何度も撫でて確認する。
その頬にそっとキスをする。
「もう…、大丈夫だから…。」
「良かったぁ…。ちゃんと病院には行けました?お薬はちゃんと飲みました?」
「結局、病院には行かなかったんだ。その代わりに公平が熱冷ましの薬をくれてぐっすりと眠れば朝には治ってたよ。」
嘘に嘘を重ねる。
罪に罪を繰り返す。
それでも僕の心配ばかりするハコが愛おしくハコに興奮を感じる事をやめられない。
僕の手の中に収まる柔らかでしなやかな身体。
「本当に心配したんだからね…。」
拗ねたように尖らせるピンク色の艶やかな唇。
その唇に唇を重ねて貪る。
全身がハコを求めて疼き出す。
ハコの全てが欲しいと心が欲情する。
この悪循環なラビリンスを抜け出せない僕はハコの身体が僕に全てを委ねるように力が抜けるまでキスを止める事が出来なった。