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不器用な夫
第18章 学生
「やっぱり国松のお屋敷って凄ーい…。」
ハコが口を開けて天井を見る。
夕食を済ませ母とおしゃべりを楽しんだハコを連れて寝る前の風呂に来た。
その風呂場でハコがはしゃぐ。
「ほら、ちゃんと身体を洗って温まらないと風邪を引くよ。」
僕はぼんやりとするハコの柔らかな身体をスポンジで洗う。
「だって、もう1つあるんでしょ?」
好奇心を剥き出しにしたハコが僕の顔を覗き込む。
「ああ、風呂?」
「うんっ!夕べはお義母様と入ったの。白い岩で囲まれててライオンの口からお湯が出てた。」
ハコがクスクスと笑う。
この屋敷には風呂だけはやたらとある。
別に温泉は引いてないが、歴代の当主が気まぐれに増やした風呂だ。
1つはハコが言うギリシャ風で母が普段使う風呂。
もう1つはもう少し小さめでレインボーシャワーやサウナなどが使える風呂。
今、僕とハコは床が畳張りで浴槽が檜という和式の風呂を使ってる。
「お風呂に畳があるとか初めて見た。」
床に座るハコが畳を撫でる。
藤原家のお屋敷はもっと立派な風呂だった。
この風呂は確か、妊婦でも楽な様にと何代か前の当主が作った風呂だ。
多分、藤原家を真似たもの。
それだけ国松の当主の母体は大切にされるという証でもある。
国松家には他にも客室に隣接させた小さな風呂なら幾つもある。
僕の部屋にも風呂は付いてたからハコがはしゃぐ理由がよくわからない。
「茅野の家にも、この程度の風呂はあるだろ?」
「畳はないよ。それにライオンの口からお湯が出るようなお風呂はホテルの大浴場だけだもん。」
「家の風呂は?」
「普通のユニットバスよ。それに浴槽は日本のお屋敷にしかなかったけど、ハコはずっとホテルに居たからそこにはほとんど住まなかったし。」
少しばかり寂しい表情をハコが見せる。