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不器用な夫
第18章 学生
愛するハコを傷付けるのは嫌だが、愛のない女を子を成す為だけに抱く気にはならない。
「要さんっ!」
僕と父が居た部屋の扉が開きハコが飛び込んで来る。
「ハコ…、買い物は済んだ?」
心臓が有り得ないほどに高鳴るのに、僕は出来るだけ冷静を装いハコと話す。
「うんっ!要さんとお義父様の分も…。」
「どんな柄?」
「まだ秘密。2週間後に出来上がれば国松のお家に届けて貰えるの。」
ハコが興奮気味に話す。
僕は父に見せつけるようにしてハコの柔らかな頬を撫でる。
僕が愛してるのはハコだけだ。
ハコはずっと真っ直ぐに僕を見て来た。
入学して僕のクラスに来た日から、ハコだけはワクワクした顔で目を輝かせて真っ直ぐに僕だけを見つめる不思議な学生だった。
それは国松に嫁入りする事をハコが知ってたからだ。
ハコは教師としてしか接しない僕を黙って見つめ続けるだけの子だった。
その真っ直ぐな瞳に僕は惹かれる。
ハコにだけ感じる愛情…。
ハコの頬にそっとキスをする。
「そろそろ…、帰ろう。」
父が母に言う。
母もハコのように父を真っ直ぐに見る。
寂しがり屋の母だが父を見る時は常に穏やかな笑顔を向けている。
ハコはいつまで僕だけを真っ直ぐに見てくれる?
僕が男に抱かれて悦ぶ姿を見た時、ハコは僕にどんな瞳を向けて来る?
それが怖くて前に進めない。
立ち止まる僕の手をハコが握る。
「帰りましょう。」
ハコの笑顔に惹かれて僕はようやく歩き出す。
ハコに導かれなければ僕は僕の道を決められない情けない夫だと思う。
僕達が国松の家に着く頃には日が暮れて夕食という時間になっていた。