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不器用な夫
第3章 学校
「おはようございます。」
職員室で爽やかな笑顔で僕にそう挨拶する女性に視線を向ける。
英語教員の森下先生だ。
僕の1つ年下だけど僕よりもしっかりとした印象を持つ森下先生がそっと僕のネクタイに触れる。
「曲がってますよ。国松先生。」
彼女はいつも笑顔のまま僕の身なりを直してくれる。
寝癖やらネクタイの歪み。
気を付けてるつもりが目敏い森下先生に見つかっては修正される毎日だ。
公平は僕が子供扱いを嫌ったその日から僕の身なりを直してくれる事がなくなった。
「それと国松先生、理事長がお呼びでしたから朝礼の前に理事長室に行った方がよろしいですよ。」
僕のネクタイの歪みの直すとそう言って森下先生が僕から離れ、自分の机へと向かう。
「ありがとうございます。」
僕が森下先生に頭を下げると彼女は満足そうな笑みを浮かべて今日の授業の準備に取り掛かる。
理事長か…。
呼び出しの内容はわかってる。
理事長とは古い付き合いなのだから…。
全国に幾つかの学園を持つ学校法人を営む一族の1人である理事長…。
古くは寺子屋以前の時代から学業という世界でトップに居た人達の末裔である一族と金貸しという学業からほど遠いような国松家の関わりは意外と深い。
学校経営も支援があればこその経営である。
そのトップ支援者が常に国松家である以上、理事長の一族は国松家に対して口を挟む事が出来ない。
その代わりに国松家はこの一族が経営する学校で学び卒業後も何らかの関わりを持ち続ける事が多い。
僕自身、この一族が経営する別の学校を出てからこの学校の教員になってる。
父はこの一族が経営する大学で教授を務めてる。
そこは僕が出た大学…。
そうやって国松家に居場所を与える見返りに理事長の一族は国松家から支援を受ける。