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不器用な夫
第21章 会話



今夜は父が居ない。

だから母がハコにべったりと寄り添う。


「試験はもう終わったの?なら泊まっていけるのかしら?」


僕をチラ見しながらハコに1人にしないでくれと母が強請る。


「それは…。」


ハコが僕の顔を見る。


「泊まりはしますよ。ただし、明日の朝早くにここを出ます。」


母に僕が答える。


「朝早く?」

「ハコを連れて行かなければいけない場所がありますから。」


僕の話に母が顔を歪める。

ハコだけが不思議そうに顔を傾げる。


「ハコを連れて行かないとダメな場所?」

「そうだよ。ハコが国松の妻なんだからね。」


この先を噂などでハコにくだらない不安を懐かせない為には絶対に連れて行く必要がある場所。

まずは、その場所にハコを連れて行くと決めた。

母だけがハコの顔を何度も撫でてハコを実の娘のように可愛がる。

国松家は男児が産まれれば、それ以上の子作りが一切出来ない。

同じ体質の男児が2人になれば国松が割れて国が混乱する危険が伴う。

それを避ける為のルール。

母は女の子が欲しかったのだろう。

女の子なら跡継ぎの男児が決まるまで、何人産んでも問題がない。

女子には受け継がれない国松の呪い。

女子は普通に育ち自由に国松家を出て行く。

他の名家から引く手あまたの国松の女子…。

至れり尽くせりの未来がわかってる女子だが、意外な事に国松にはほとんど女子が生まれない。

母は欲しかった娘をハコに期待する。


「お食事の後は一緒にお風呂に入りましょうね。」


母は寝るまでハコを手放さないつもりだ。

僕は母の自由にさせる。

母に求められてハコも幸せそうな表情をするからだ。


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