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不器用な夫
第21章 会話



茅野の両親や兄弟も決してハコに愛情がなかった訳じゃない。

ただ幼いハコには1人で家族の帰りを待つだけの身が辛すぎてハコは寂しがり屋になってしまった。

その寂しさを寂しい母と埋めて家族の絆をハコが感じるなら、それはそれで良しとする。

その夜は母がハコを手放そうとしない姿を僕は眺めるだけだった。


「ハコ…、起きて…。」


朝日がまだ上がらない時間にハコを揺り起こす。


「ん…。」


目を擦るハコが豪快に欠伸をする。


「着替えて車に乗って…。」


まだ寝ぼけるハコの着替えを手伝う。

こういう時のハコは平気でブラジャーを無視する子だから僕が手伝う必要がある。

不器用ながらもハコに無事ブラジャーを付けさせてハコが着替えに持って来たワンピースを着せる。


「今…、何時…。」


車に乗り込みハコがまた欠伸をする。


「5時前…。」

「公平さんは?」

「公平は連れて行かない。」


だから僕が運転する。


「要さんの運転?」

「そうだよ。だからハコはまだ寝てていいよ。」


僕の運転だとハコを連れて行く場所までそれなりに時間がかかる。


「どこに行くの?」


眠そうな声でハコが聞いて来る。

その目を閉じて背もたれに体重を乗せて無防備なハコがまた欠伸をした。


「おやすみ…。」


僕の声が届いたかはわからない。

直ぐにハコの口元からはスースーと寝息が零れ出す。

高速道路に乗り朝日が刺す道をのんびりと走る。

ハコを連れて行きたい場所。

そこに行かなければ僕とハコはいつまでも前に進む事が出来ない。

ハコを僕の妻として、そこに連れて行く。

その思いだけを懐き、僕は車を走らせた。


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