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不器用な夫
第22章 時間
泣き止み落ち着いた僕を母のように抱き締めたままの僕の髪をハコが撫でる。
「全部…、知ってたのか?」
なんだか気が抜けた。
「うん…。」
優しい声…。
「なら…、なんで言ってくれなかったの?」
僕は苦笑いをする。
「しましたよ?藤原家に行く必要があるかってハコから言ったじゃないですか?」
天然娘が無邪気に答える。
「でも、その話の後は要さん…、ずっと考え事しててハコの事なんかそっちのけにしたから…。」
ハコが口を尖らせる。
「だからっ!あれは…。」
「親友の事を考えてたんでしょ?曽我さんって藤原家の次期当主の事を…。」
「そうだよ。」
「でも要さんが凄く嬉しそうだったもん。ハコよりもその人の方が大切な人みたいな顔をしてた。」
だから僕から誘った京都には行きたくないのだとハコが駄々を捏ねた。
「残念だけど、曽我ならこの東京に居るよ。」
「えーっ!?嘘ーっ!?」
「今の京都に居るのは現当主で曽我の叔父に当たる清太郎さんの方だってば。」
「でも要さんがハコよりも好きな人なんでしょ?」
ハコのヤキモチを可愛いと思える。
「僕が愛してるのはハコだけです。」
「本当に?」
「身体が普通なら毎日でもハコを抱いてハコの中に挿れたいよ。」
「要さんのえっち…♥」
ハコが笑ってくれる。
「それよりも…、結婚前のハコは父さんからどこまで話を聞いてたの?」
本当に全てを理解しているのか確認する必要がある。
そこが天然娘の恐ろしい部分。
歪んだ形で理解をしてたら後で僕が痛い目を見ると学習済みの僕は警戒する。
僕の質問にハコが少しだけ悲しげな顔をする。
僕にどう話すべきか迷った顔…。
「ハコ?」
僕はハコを急かせて促す。