この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
不器用な夫
第23章 教師
夕暮れの街を眺めながらバスに乗ってた。
学校からはバスで15分という距離。
果歩から預かってた住所と鍵だけが今は頼りだ。
運転手に住所を確認して貰い、僕が降りる停留所は教わった。
その停留所からは住所だけを頼りに自力でその場所を探す事になる。
日が完全に暮れるまでに見つけなきゃ…。
ビクビクと怯えながら知らない街でバスを降りる。
僕は無事にハコが待つ家に帰れるのだろうか?
そんな不安しか浮かばない。
コンビニを見つけレジに居た男に道を聞く。
幸いな事にコンビニの店員がその住所を知っていた為に地図まで書いて僕を送り出してくれる。
コンビニから5分ほどを歩く。
うちの様なタワーマンションではないが、そこそこのマンションが目に入る。
フロントはオートロックドアで閉じられている。
そのドアに果歩から預かってた鍵を差し込めばドアが普通に開き僕を迎え入れる。
このマンションに間違いがないと確信してエレベーターに乗り込む。
目的のフロアでエレベーターから降りてからは似たような扉が幾つか並ぶ廊下を慎重に歩いて目的の部屋を探す。
「ここか…。」
多分、預かった鍵で部屋に入る事も可能だろう。
敢えて、それはせずにインターホンを鳴らす。
インターホンのカメラには僕の姿が写ってる。
直ぐに扉が開き水色の落ち着いたワンピースを着た果歩が僕に飛び付いた。
「先生っ!来てくれたのね…。」
満面の笑みを僕に向ける果歩の痩せた身体を僕から引き剥がす。
「これは家庭訪問だ。」
愛人として来たつもりはない。
僕は教師としてここに来たのだと果歩にはっきりと伝えてやる。