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不器用な夫
第3章 学校
そんな状況に追い込まれるかもしれない果歩に気休めの助けだけを僕は与える。
基本的に国松家は個人的な援助はしない。
金貸しのレベルが違うから…。
但し、財政難を乗り切る手立ての助言くらいは出来るはずだ。
父は経済学の教授なのだから…。
後は三浦家の判断次第になるが賢い果歩なら切り抜けられるかもしれないと僕は考える。
そこから僕は受け持ちの授業をこなす。
古典は授業時間が少ないから僕は暇な教師だと思われがちだ。
「国松先生、お昼はご一緒しませんか?」
忙しい森下先生からの誘い。
僕は大人しく森下先生と食堂へ行く。
教職員専用の食堂。
森下先生もそれなりに名家の出身だ。
気ままなお嬢様をやれるのは家柄のレベルの低さと兄弟という跡取りが存在するお陰だという事を彼女はまだ理解をしてない。
「この学校の学生って本当にやりにくいですよね。」
彼女は学生に対する不満が多い。
英語教員であるがバイリンガルな学生もかなり居る学校じゃ中途半端な教員は馬鹿にされるだけになる。
「私も海外留学でもしようかな…。」
僕をチラ見しながら森下先生が言う。
「そうですね…。」
僕は曖昧な言葉を繰り返す。
「国松先生って…、意外と冷たいですね。」
寂しそうに森下先生が笑う。
「そうですか?」
「冷たいですよ。同僚が海外留学するって言ってるのに行ってらっしゃいだけですもの。」
「羨ましいんですよ。簡単に行ける人が…。」
「国松先生なら幾らでも行けるじゃないですか?」
学生である果歩よりも国松家を理解してない森下先生に僕は苦笑いだけをする。
ただの資産家レベルだと思う人が多い国松家。
一般的には歴代の当主が地味な公務員や教職員ばかりを選ぶ変わった一族というイメージしかない。