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不器用な夫
第3章 学校



その国松家には何かと秘密がある。

僕自身にも…。

その秘密を抱えながらの国松家独特の婚姻を乗り越えるのが国松家の当主の役目。

絶える訳にはいかない一族の悲しい宿命を気楽なお嬢様の森下先生に理解して欲しいとは思わない。

ハコは…。

どこまで理解をしてるのだろう?

何も知らずに国松家へ来たのか?

知ってて国松家に来たのか?

秘密が多い国松家。

天然なハコからはハコの意思が読み取りにくい。

ハコの事を考える僕に森下先生が嫌な顔を見せる。


「聞いてますか?」

「はい?」

「秋の野外授業の事ですよ。」

「ああ…。」


秋に行われる野外授業。

この学校に修学旅行は存在しない。

海外旅行へ当たり前のように行くお嬢様達に普通の修学旅行をさせるのは至難の技になる為に敢えて修学旅行を取り止めて1年生の段階で野外授業という旅行を強行して学校側は単位取得を務める。

豪華客船を貸し切りにして3泊4日の船旅と洒落込む野外授業。

社交を学ぶ為に毎夜行われるダンスパーティー。

プールで遊ぶも良し映画を楽しむも良し図書館で静かな読書を楽しむも良しという野外授業だが船の上での隔離生活を受けるだけの旅行である。

この旅行には一名のみの執事の同行が許される。


「国松先生はどなたか同行のご予定が?」


森下先生が興味深く僕を見る。

教員でも執事の同行が認められている。

場合に寄っては自分のパートナーとして妻を同行する事も可能である。


「僕は多分1人ですよ。」


公平を同行させる予定はない。

妻は学生として自動的に参加してる。

その事を知らない森下先生が僕に嬉しそうな笑顔を向ける。


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