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不器用な夫
第24章 融資
公平が車を停める。
その公平を従えて僕は目的の銀行に入る。
「ここが緒方の銀行か?」
僕の質問に公平が頷いた。
「本日のご要件は?」
手もみをしながらやたらと腰の低い中年の男が僕に寄って来る。
「ここの頭取に融資について話しがある。国松だと伝えてくれ。」
僕の要件に中年男が眉を顰める。
「頭取ですか…?頭取は今、来客中でして…。」
下手な言い訳は聞きたくない気分だ。
「国松を追い返したとわかれば、クビで済まなくなると知らないのか?」
公平がニヤニヤと笑いながら中年男を脅す。
一流と呼ばれる企業銀行なら、国松の名前だけで奥の部屋に通されて当たり前の事だ。
そんな風に社員教育すら出来てない銀行と取り引きをするリスクを持ち出した僕に公平が
「坊っちゃま…、やはりこの銀行だけはお止めになった方がよろしいかと…。」
と嫌な顔をする。
中年男が慌てたように
「少々、お待ち下さい。」
と叫び受け付けカウンターの奥へと姿を消す。
本店だというのに、人がほとんど居ない。
三浦から受けた打撃は国松の愛人程度の噂ではどうにもならない状況らしい。
その方が僕には都合が良いと笑う。
「頭取のお部屋にご案内致します。」
さっきの腰の低い中年男が僕達に駆け寄った。
その男の後について銀行の奥へと進む。
「失礼致します。」
怯えた顔の中年男が木で出来た扉をノックして開けば
「ようこそ、国松先生。今日はどういったご要件でわざわざ当銀行へ?」
と満面の笑みを浮かべる果歩の叔父が突き出た腹を揺さぶる。
果歩を利用して僕を誘き出せた喜びを隠そうとすらしない男に嫌悪感しか感じない。