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不器用な夫
第24章 融資
室内に案内を受け、無駄に豪華な応接のソファーに座り、接客のコーヒーが置かれるまで僕はまんじりと待つ事になる。
銀行の従業員が消え、勿体付けて僕の前に座る果歩の叔父が嫌な笑顔を浮かべて僕を見る。
今から僕はこの男を叩きのめす。
それが教師である僕の役目。
今の段階では出来るだけ冷静になり気持ちを落ち着けて話を切り出す。
「あくまでも僕の個人資産ですがね。使い道がないままでは意味がないので、今後の事を考えて投資信託に出す事を検討中なんですよ。」
僕の個人資産。
港の経営権と僕が住むマンションからの賃貸収入だけではあるが、教師の給与だけで生活をする僕はそれが入る口座を見た事すらない。
国松の人間とはそんなものだ。
勝手に増えていく資産。
その資産に興味はなく、自分のやりたい事だけに自分が稼ぐ資産を注ぎ込むくらいで資産は雪だるま的に膨れ上がる。
幾ら税を収めても有り余る。
それを自分の力に変えて利用する。
それが国松のやり方…。
本能が僕にそう教える。
「国松先生の個人資産ですか…?どの程度の運用をお考えですか?」
僕に対する値踏みにすら嫌悪する。
「最低運用は?上限もあるでしょうし…。」
慣れない駆け引きに挑む。
父ならばもっと上手くやるのだろう。
不器用な僕は慎重に話を進めて行くだけで精一杯。
「最低なら、100万単位から承ります。当銀行に上限はありませんよ。」
果歩の叔父は馬鹿にしたように僕を見る。
国松とはいえ、今はただの教師。
当主ではないのだから個人資産なんか高が知れてるだろうという判断を下してる。
僕なんか、この世界じゃ若造の類いになる。