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不器用な夫
第25章 避妊



部屋を出れば廊下に佇む公平が居る。


「奥方様は…?」


ハコを傷付けたのではないかと公平なりに心配をしてくれてる。


「泣き疲れて眠ったよ…。」


卒業まではハコの妊娠はない。

それを公平に説明する。

公平が居れば藤原家に行かずともハコの妊娠が可能だとわかった今になって僕が妊娠を拒否した事に公平も驚きの表情を隠せない。


「坊っちゃま…、何故…?」

「教師だからかな?果歩に女だという愛情は全くなかったけど教師として国松の力を利用してでも助けてやりたいと考えた。」

「ですが…。」

「わかってるよ。ハコは妻だ。僕は間違いなくハコを妻として愛してる。だけど、やっぱり僕の生徒であるうちは僕の中の教師の部分がハコを妊娠させる事を嫌だと感じてしまうんだ。」


割り切ってしまえばいい事が割り切れない。


「相変わらず不器用な方だ…。」


公平が呆れた顔で僕を見る。


「だから、お前が頼りなんだよ。」


僕は不器用で公平が居なければ何も出来ない男だとは嫌という程にわかってる。


「食事の時間だからハコを起こしてくれるか?僕はシャワーを浴びてからダイニングに行くから。」

「御意…。」


酷い夫だと思う。

今のハコは公平に会いたくないかもしれないのに、公平は僕の執事だとハコには押し付ける。

そしてハコの望みを断ち切った。

最悪だと思う。

僕の予想通りに最悪の歯車が回り出す。

父が帰って来て始まった食事は今にも泣きそうなハコに僕を睨む母という状況だ。

更に食事中は無言だった父が僕を書斎に呼び出す。


「なんて事をしてくれたのだ。」


久しぶりの父の説教は緒方の銀行と僕が勝手に取り引きした件についてだ。


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