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不器用な夫
第25章 避妊
言われなくとも愛人騒ぎも、その尻拭いももうお断りだと思う。
「やらないから…。」
「そうして下さい。元々、器用に立ち回れる坊っちゃまじゃないのですから。」
チュッと公平が馬鹿にしたように僕の頬にキスをする。
「お前、執事として躾直してやる。」
いつものおふざけのつもりで僕が公平をベッドに押し倒し僕が公平の上に跨った。
「坊っちゃまが俺に勝てると?」
公平が僕の頭を押さえ付ける。
これが主に対する執事の態度か?
兄のような公平だから僕は笑うしかない。
「どうせ僕は公平が居ないと駄目な男です。」
「わかってるなら結構です。」
公平が僕を抱えて起き上がろうとする。
「要さん…?」
僕の部屋の扉が開き浴衣を着たハコが居る。
「要さん…?」
ハコの声が1トーン下がり大きな瞳が細くなる。
僕はまだ公平に跨り公平の首に腕を回したまま、ハコに背を向けた公平に身体を預けてる。
公平の方は僕の腰を抱いたままクックッと俯いて笑い出す。
「やっぱり…、要さんに…、ハコは必要がないみたいですよね?」
ハコが唇をワナワナと震わせる。
金魚が泳ぐ紺色の浴衣を着て、きっちりと結い上げた髪の両サイドには浴衣に合わせた赤い金魚の髪飾りが付いている。
それが、まるで角のように見える僕の妻…。
慌てて公平の上から飛び退いた。
「ハコ?ハコさん…。」
「知りません!」
公平が腹を抱えてゲラゲラと笑う。
「公平っ!お前は出て行け!」
公平を部屋から追い出すと共に僕はベッドに座ったハコの前に正座する。
「だから、誤解だって…。」
「知りませんってば…。」
「あれは公平とふざけてただけで…。」
「聞きたくありません!」
僕とハコの夫婦生活はまだまだ絆が未熟です。
屋形船が出航するまでの2時間を僕はハコのご機嫌取りに必死になるしかなかった。