この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
不器用な夫
第26章 迷子
それだけは…。
ハコの未来を奪う事になると僕は抵抗する。
既に結婚という形でハコの未来を奪ってる。
ハコに国松の嫁なんだと国松家に縛り付けるだけの夫にはなりたくない。
迷う僕を父が叱る。
「よく…、考えろ。お前に対する申し込みは五代だけではない。だが五代を退ける事が出来れば他の名家も諦めるだろう。」
「五代以外は?」
「清宮だ。」
五代と並ぶ政治家の一族。
当然、清宮からも出馬を考えてるから国松を欲しがる訳だと納得する。
五代とぶつかり続ける清宮…。
まるで景品の扱いだと自分の立場を笑いたくなる。
現当主の父を動かす事は不可能に近い。
未熟者の僕なら安易に動かせるだろうと名家が挙って奪い合いを繰り広げる。
迂闊な僕がハコとの婚姻を洩らした事から歯車が狂った。
ハコを守る為には子を成すだけだと父が迫る。
「道は1つではないはずです。」
未熟なりに考える。
どうすれば…。
ハコに未来を与えてやれる?
僕の力では限界がある。
国松の当主であれば絶対的になる力。
僕が愛人などお断りだと言えば野心を見せる名家は引き下がる。
その力を持つには子を成す事が条件。
それはハコの未来を奪う。
力を持つ父は僕を取り巻く人間を野放しにする。
父を恨みたくなる。
「父さんから…。」
話を出来ないかと言う前に
「国松は他家との関わりは持たない。よく覚えておけ…。」
と先に釘を刺された。
他家との関わりを持たない。
つまり僕を取り巻く他家に口出しはしない。
口出しをすれば見返りが必要になる。
当主として足元は見せないと父が僕を切りつける。
清太郎さんが曽我に厳しかったように父も僕に甘くはないらしい。
ため息を吐いて父の書斎から逃げ出すだけの未熟者は迷子になりそうな気分だった。