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不器用な夫
第26章 迷子
花火が終わり屋敷に帰る車の中でもハコは怯えた顔を止めようとはしない。
父と母の車に五代の姉妹が乗ってる。
絵里美達が今夜はうちに泊まると公平が言う。
「坊っちゃまのお部屋には近付けませんから。」
公平がハコに気遣ってるのを感じる。
わざと父達の車よりもゆっくりと車を走らせてる。
これ以上、絵里美達とハコを接触させまいと公平なりに気を遣う。
父達に遅れて屋敷に戻れば東が僕を呼びに来る。
「ご主人様がお呼びです。」
その言葉に逆らう事は許されない。
「公平、ハコを頼む。」
「御意。」
僕にしがみつくハコを公平に託すしかない。
「僕が居ないからと言って公平と浮気をしたら許さないよ。」
冗談を言ってハコを僕から引き離す。
ハコが泣きそうな顔で笑う。
「すぐに戻るからね。」
ハコの額にキスをして父が待つ書斎へと向かった。
書斎の前では東がいつものように扉をノックする。
「旦那様、坊っちゃまをお連れしました。」
東が扉を開けて僕は部屋の中に入る。
「状況は理解をしたか?」
いきなりの父の質問。
「ハコが怯えてます。」
僕は父を責める言葉を投げかける。
ハコを僕の妻にと連れて来たのは父だ。
「わかってる。だが国松の婚姻が外部に洩れたのはお前自身の責任だ。」
「僕の?」
「そのお相手が茅野家の令嬢だと洩れるのも時間の問題だと思え。」
妻を守る為に伏せられる婚姻を僕自身が世間にバラしたと叱責される。
このまま、ハコが僕の学生だと騒ぎになれば学校側も黙ってられなくなる。
「腹を括れ…。」
高校生だろうとハコを妊娠させるべきだと父が言う。