この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
不器用な夫
第27章 家出
父の書斎を出てハコの元へと急ぐ僕を阻むのは絵里美だった。
廊下で僕を待ち伏せる絵里美に怒りしか感じない。
「どういうつもりか説明をしてくれるか?」
やりにくいと思う。
絵里美が男なら僕の体内に存在する国松の力で威圧してねじ伏せる事が可能になる。
だが絵里美は女だ。
あの頃と変わらない少しキツい目をして僕を射抜くように真っ直ぐに見る。
この真っ直ぐで揺るぎない態度が好きだった。
今は、それが鼻に付く。
国松に歯向かう瞳。
「いくら鈍い要でも、もうわかってるでしょ?」
挑発するような言葉。
「生憎、鈍いからわからないね。」
絵里美と亜由美がやってる事は国松への攻撃だとしか受け取れない。
「緒方から国松の婚姻の噂が流れたわ…。」
「そんな事はわかってる。」
「誰もがその相手を調べて当然でしょ?」
国松の嫁の家柄次第では自分達にも有利になる。
茅野家は海外を拠点とする一族。
国内で根を張り旧き時代にしがみつく連中には絡みが少ない。
しかし、茅野家に恩を売れば国松家に近付けるチャンスが浮上する。
緒方は僕が若い女を好みだと勘違いしてハコの同級生である姪を差し出して失敗した。
「僕が愛人を持つつもりがない事も理解したんじゃないのか?」
緒方の一件で収まるはずの愛人騒ぎだった。
「相変わらずのお坊っちゃんね。要は…。」
呆れた顔を絵里美がする。
「悪かったな。」
「そういう要が好きよ。見ててハラハラさせる。私が支えてあげないとと女性に思わせる。」
「それをするのは葉子だと決まった事だ。」
「なら、何故、彼女はまだここに居るの?」
絵里美が全てを見透かすように僕を見る。