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不器用な夫
第27章 家出
「何の事だ?」
絵里美が言いたい事がわからない。
「国松の婚姻が囁かれてから藤原が動いてないわ。1000年以上も国松の婚姻には藤原家が欠かせなかった国松家の行動は名家じゃ誰もが知ってるわ。」
絵里美の言葉にしまったと思う。
国松の秘密は明らかでなくとも藤原との関係は明らかになってる。
父も母を連れて藤原家に行き僕を妊娠させた。
1000年以上もそのパターンが繰り返されれば国松の嫡子作りに何らかの形で藤原が必要だとの憶測が名家の間で生まれて当然の事だ。
「つまり、今回の国松の婚姻はまだ高校生の妻に何も出来ない状況なのだと他家は判断したのよ。」
「勝手な憶測だな。」
「そうね、だけど私は要を知ってる。自分の生徒を妊娠させて、その子の可能性を潰すような教師じゃないはずだわ。」
絵里美が悲しげに廊下の窓を見る。
「ねえ、要…。」
「ん?」
「あの頃を覚えてる?」
「さあな…。」
僕にはもうハコが居る。
絵里美との昔話で流される訳にいかない。
「あの時、私から申し込めば要は本気で私を受け入れてくれた?」
今更の話だとしか感じない。
「それはないな。あの頃の君は教師になる為に自分の道をしっかりと歩む人だった。僕はその妨げになる夫になんかなりたくなかった。」
それが絵里美に対する本音だった。
情熱的で強気な絵里美が好きだった。
その情熱の全てを教師に掲げて突き進む絵里美の邪魔にはなりたくなかった。
「私がイギリスに行ってる間に五代は亜由美を要にと申し込んだわ。」
「それは僕も知らなかった。」
「みたいね、国松の返事は要が亜由美を選ぶならという答えだったもの。」
僕は亜由美の学校の教師になった。