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不器用な夫
第28章 玩具
料亭を出た時に清太郎さんが僕に鍵を握らせる。
見覚えのある鍵だ。
「清太郎さん…。」
「あの部屋は国松専用だと教えたはずだ。」
清太郎さんはそれだけを僕に伝えて仕事に戻る。
ハコを妊娠させる為の国松専用の部屋。
清太郎さんまでもがハコの妊娠を望むのか?
勝手な野望に巻き込まれた少女を救えるのは僕だけだと突き付けられた苦い気分を味わう。
ひとまずハコは生理中だというハコの体調を戻すのが先だと思う。
2、3日はハコと穏やかな生活を送る。
静かな藤原家ではハコと笑うだけの生活。
「清太郎さんの京懐石は美味しいけど、ハコはハンバーガーが食べたいかも…。」
清太郎さんに聞こえないようにハコが話す。
「ハコの体調が良いなら観光に出掛けてハンバーガーを食べに行こう。」
そうやって僕は藤原家からハコを連れ出す。
僕自身も京都をちゃんと理解してる訳じゃない。
「何処に行こう?」
ハコに聞いてもハコは肩を竦めるだけになる。
「駅前で観光ガイドを手に入れるか…。」
そうやって京都駅へとまずは向かう。
「あっち…、ねえ!要さん、見てもいい?」
広いコンコースをハコが右に左にと興奮した顔で動き回る。
僕はハコについて行くのにやっとだ。
「ハコ…、待って…。」
女子高生パワーを舐めていた。
人混みなど何のそのと動くハコを見失わないだけで一苦労な僕の手をハコが笑って握ってくれる。
「要さんって、すぐに迷子になるんだから…。」
子供に子供扱いを受ける。
「悪かったね。」
「ちゃんとハコについて来て…。」
「うん、でも…、ここはどこ?」
「ハコにもわかんない。」
広い駅をウロチョロと動き回り過ぎた僕とハコは迷子になる。