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不器用な夫
第28章 玩具



「ちゃんと観光ガイドを見て目的地を決めた方が良くないか?」


僕の提案にハコが同意する。


「要さんの行きたい場所は?」


観光ガイドを開き僕が惹かれる場所は1つ。


「渉成園だ。」


僕が行きたい場所にまずはハコと向かってみる。

渉成園…、またの名を枳殻邸とも呼ぶ東本願寺の飛び境内である日本庭園だ。


「なんで要さんはこのお庭を見たかったの?」

「ただの庭じゃない。」

「でも…、藤原家のお庭と変わらない気がする。」

「藤原家と同じくらい歴史があるからね。」

「それをわざわざ見たかったの?」

「源氏物語のモデルになったと言われてる人の縁の場所だからね。」


古典文学が好きな人なら必ずこの庭園を訪れる。

出不精で家で本ばかりを読む僕ですら一度は来たいと願う場所だとハコに理解して欲しい。

ハコにも自分の好きな世界で行きたいと願う場所があるはずだ。

そこに行けるのは今だけかもしれない可能性をもっとハコに探求して欲しいとばかり考える。


「ハコには古典なんてわかんないよ。意味は覚える事が出来てもハコの中ではやっぱり滅びた言葉だとしか感じないもん。」


ここに来て、勉強なのかとハコが嫌な顔をする。


「じゃあ、ハコが好きな事は…?」

「要さん…。」

「それは意味が違うだろ?」

「同じだよ。ハコは要さんだけが好き。要さんとだけ居たいし、要さんに愛されて抱かれるのが一番好きな時間だもん。」


改めて言われると照れくさいとか思う。

ハコが生理中でなければ今すぐにベッドに押し倒したい欲求が湧いて来る。

自分だけじゃ満足に勃起も出来ない夫のくせにハコに対する欲求だけは日に日に高まるばかりだ。


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