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不器用な夫
第29章 生活
ハコが帰って来た時に僕はハコが誇れる夫でありたいと願う。
名家にしがみつき、嫁に行く事だけにしがみつく女の世話になってたとハコの耳に入れば僕はハコを失ってしまう。
「僕の妻は怖いからね。」
僕の言葉を聞いた亜由美が馬鹿にしたような表情を浮かべる。
「高校生で何も出来ずに逃げ出した少女など、国松の妻に相応しくないわ。」
世間はそう考えてるのかと思う。
「なあ、亜由美。葉子は逃げ出した訳じゃない。あの子は特別な子だからね。」
「大人しく夫に寄り添えない妻が特別ですか?」
未だに嫁の貰い手がない絵里美を馬鹿にした言葉を亜由美が吐く。
「葉子は特別だから国松の妻に選ばれたんだ。平凡な君が選ばれないのは君には何もないからだ。」
「そう言う要さんはお姉ちゃんを選ばなかった。特別な事が出来たところで妻として母として必要な事が出来ない女は結局は逃げ出すだけになるのよ。」
出来る姉と比べられて来た大人しいだけの亜由美。
今は姉よりも若く五代の為に価値のある女性だと扱われてる為に強気の発言をする。
自分がもののような扱いを受けている事にすら気付いてない亜由美からは憐れだとしか感じない。
「逃げてるのは君だよ…。亜由美…。」
「私が?」
「亜由美は五代が無ければ生きていけない。五代の為に国松の妻になろうとする。」
「それがいけませんか?」
「僕の学生にも家の為に犠牲になろうと自分を傷付けた娘が居たよ。その学生はもう家を捨てて自分の為に生きると決意をした。亜由美も自分の為に生きる道を見つけなければ傷付くだけになる。」
学生である果歩ですら自分の道を見つけると自分の足で歩き出した。
自分の人生を自分で歩こうとしない亜由美と僕の歩く道が絶対に交わるはずがない。
亜由美との話は時間の無駄だと亜由美を追い返すだけだった。
僕の道は必ずハコに繋がると信じる僕は我が道を突き進むしかなかった。