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不器用な夫
第30章 おかえり
「ハコ…、今は君も部外者だからな。」
「えーっ!?」
相変わらずだとハコに呆れる。
ハコに言いたかったはずの言葉が全て消え失せる。
ひとまずはと僕はハコを連れて自分の教員室へと向かう。
「あら、茅野さん?」
再び新巻先生に呼び止められる。
「わあ、先生っ!久しぶりーっ!」
茅野節は健在だ。
「アメリカから帰って来たの?この学校に戻るの?」
新巻先生がハコを質問責めにする。
「学校は向こうで大学まで済ませて来たよ。今日は要さんをびっくりさせるつもりだったから家で要さんの帰りを待つ予定だったけど、アメリカに家の鍵を忘れて来ちゃったみたいなの。」
ケタケタと笑いながらハコが新巻先生と話す。
確かにサプライズだが鍵を取りに来た段階で全くサプライズになってないぞ。
僕はため息を吐くだけになる。
「そういう訳なので妻を連れて帰ります。」
新巻先生に説明をして教員室で荷物を取る。
「懐かしいね?」
ハコが僕の教員室を見て笑う。
この2年半、僕は同じ教員室だ。
「まさかノーパンじゃないよね?」
「そんな事はしてません。」
口を尖らせるハコに安心する。
どこに居ようとハコはやっぱり僕の妻のままだった。
「帰ろう…。」
ハコを連れて学校を出る。
もう誰にも文句を言わせずにハコと並んで歩ける。
「大学まで済ませたのか?」
「面倒だから、そうしたの。」
僕の予定じゃ高校だけ済ませて帰って来ると思ってたのにハコは大学まで済ませて来た。
「待ちくたびれたよ。」
「まさか要さん…、浮気した?」
「僕はそんな器用な男じゃありません。」
1年の予定だった里帰りが2年になった。